デザインの差別化を図る「プラスワン」
劒持:SOL styleは「FUN&FUNCTION」をキーワードに掲げ、インテリアデザイン、プロダクトデザイン、展示会場デザインの3つを業務の柱にしています。おもしろいと思うものにはジャンルを問わず挑戦しますが、「楽しさ」と「考え抜いた機能」は必ず取り入れるようにしています。
伊東:デザインの差別化を図るため、好み以外の部分で選ばれる理由をつくるよう意識しています。店舗デザインであれば、お客さんの目を引く「小さな違和感」や新規客を取り込む仕掛けを、プラスワンの要素として取り入れています。
劒持:プラスワンが生まれるまでの過程は、日々の小さな積み重ねです。ラーメン屋を設計するときはラーメンを食べ歩いたり、ワインバーを設計するときはワインを積極的に飲んだりして、毎日少しずつ思考を巡らせていたものが、ある日パッと形になる。日常の中から得た発想を活かせることに、デザインの楽しさを感じています。
-edited.jpg)
スク―ミーの世界観と通じる「FUN&FUNCTION」
伊東:私たちは、廃材を活用したプロダクト開発にも取り組んでいます。きっかけは十数年前の、産業廃棄物処理を行う会社との出会いでした。エネルギーを消費してリサイクルをするのではなく、そのままの素材で新たな価値を生み出す方法を模索している会社で、廃材を展示会の装飾に使用するなど、さまざまな形でコラボレーションを行いました。
劒持:産業廃棄物処理場にお邪魔すると、そこは資材になりうる「ゴミ」が眠る宝の山でした。その後、別のアクリル工場とお仕事をした際には、工場に落ちているアクリル端材の可能性に魅了され、切子ガラスの職人さんと試行錯誤しながら、Air’s scope「切子ガラスの万華鏡」をつくり上げました。廃材を有効活用するプロダクトは、eDIYの世界観に通じるものがあるかもしれません。
伊東:インテリア商材の展示会では、ワイヤーシステムの会社のブースデザインを担当したことがあります。展示した大量のワイヤーに電気センサーを仕込み、触れるとブースの照明の色が変化するという仕掛けを施しました。電気センサーというプラスワンの機能を仕掛けることで、本来は何かを吊るすためのものであるワイヤーが、「魅せる」ものに変わる。テクノロジーを用いてものの見え方を演出するというのは、スク―ミーボードでも実践できるのではないでしょうか。
-1024x331.jpg)
「好き」を突き詰め、アイデアを広げる
劒持さん:デザインを考えるとき、0から1を生み出すのは難しいけれど、一つ縛りを設けることで、アイデアが広げやすくなると思います。アルミだったらどうかな、円形だったらどうかな、など特定の素材や形に絞ってアイデア出しをするのがおすすめです。
伊東さん:僕はやはりプラスワンを意識してデザインを考えることが多いです。触るとLEDが光る機能があったとして、そこに何か一つ自分のやりたいことを加えられたら、人とは違うものをつくることができる。特に子どもはいろいろなことに興味を持ちますが、好きを突き詰め、他人にはない自分の強みを持つことは、社会では机上での勉強以上に役立つことが多いと感じます。ですので子どもの頃は、やりたいことをやりたいだけ、全力で挑戦できると良いと思います。
劒持:私も、子どもの頃はどんどん好きなことを突き詰めてほしいと思います。知らないことのなかに、心惹かれる何かがあるかもしれないので、ぜひいろいろなことに挑戦してほしいです。私自身、初めての分野のデザインをするときは勉強の連続ですが、これからもいろいろなものを楽しみ、挑戦し続けたいと思っています。
-1024x683.jpg)
SOL style
伊東 裕 氏・劒持 良美 氏
伊東裕、劒持良美が2009年に設立したクリエイティブカンパニー。
建築、インテリアからプロダクトまで「FUN&FUNCTION」をキーワードに、求めるもの・形にできない思いを「在り方」からデザインする。
会場デザイン、空間デザイン、プロダクトデザイン、講演まで多岐にわたり活動。

