どんな環境の子どもたちも、夢を叶えられるアカデミーをつくる

モットーは、必要とする人たちに食品を届けること

米山

 安全性に問題がないのに廃棄されてしまう食品を寄贈していただき、必要としている施設や団体に無償で提供する活動がフードバンクです。1970年代のアメリカに端を発し、日本では2000年代初頭から各地に団体が設立されるようになりました。フードバンク山梨は、地域に貢献できるボランティアをしたいという思いから、2008年に私1人で自宅から活動をスタートしました。仲間が増えてNPO法人となり、現在は南アルプス市を拠点に全県で行政と連携した活動を行っています。

 活動を続けるなかで、日本でも日々の食事に事欠く子どもたちが身近にいることを知り、「子どもの貧困」への意識が強まっていきました。2015年には「フードバンクこども支援プロジェクト」を立ち上げ、学校給食のない長期休暇の間に、就学援助受給世帯などに対して食品を直接送付する活動を行っています。山梨から始まったこのプロジェクトは、現在全国30以上のフードバンクで実施されています。このようにフードバンク山梨では、最も支援を必要とする人たちに食品を届けることを第一に活動しています。 

夢を持つための学習支援

米山:

 食料支援を通して、毎日食べさせることに精一杯で子どもの学習に目を向ける余裕のない親御さんや、夢を持てずにいる子どもの状況を目の当たりにしました。社会の一員として、そういった子どもたちに夢や希望を持って生きてほしいという思いから、食料支援と並行し、学習支援も行うようになりました。

城野:

 未来を担う子どもたちが挑戦、成長できる場をつくりたいというヴィジョナリーパワー株式会社の構想と、我々が力を入れている学習支援が結びついたのが、小中学生を対象にしたTSAです。株式会社スクーミー、バンビバイリンガル幼稚園、株式会社まもかーるの皆さんがその思いに共鳴してくださり、ボランタリーな形で仕組みを構築することができました。

米山:

 高校生向けプログラミング講座は、社会の入口により近い高校生を対象に、フードバンク山梨が主体となって立ち上げた講座です。プログラミングは学歴関係なくどんな環境の人も挑戦できることなので、パソコンなどの機械は支援を募って賄いながら、若者が夢を叶えられる道筋をつくっていきたいです。

フードバンク山梨と子どもたちの未来

城野:

 食料支援受給世帯の子どもたちにとって、「自分は受け取るだけでなく与えることもできる存在だ」という意識を育むことが重要だと考えています。食料を受け取るだけではそういう意識は生まれないので、TSAやプログラミング講座が子どもたちの自信を育てる場になればと期待しています。子どもたちがここで得たものを活かして、家族や友人、地域や社会に貢献できる人になっていく。TSAやプログラミング講座で得た最初の自信を大切に、子どもたちにはさらに飛躍してもらえたら嬉しいです。

米山:

 すぐ隣に子どもの貧困があっても、気付くことは意外と難しい。フードバンク山梨では、活動のなかで出会ったご家族の実話に基づいた『フードバンクとぼく』というアドボカシーブックを制作したので、こういった本や私たちの活動を通して、多くの方に現状を知ってもらえたらと思っています。

 将来的には、ケアリーバー(児童養護施設や里親などの社会的養護を離れた若者)など、幅広い「若者」を対象にした「フードバンク未来アカデミー」を立ち上げたいと思っています。IT、料理、美容など、さまざまな分野の勉強ができるアカデミーをつくり、生活が苦しい中でも夢を叶えられる子どもたちを送り出す。その目標に向かって、これからも活動を続けていきます。

認定NPO法人フードバンク山梨
理事長 米山 けいこ子 氏
副理事長 城野 仁志 氏
山梨県南アルプス市を拠点とするNPO法人。山梨県における食のセーフティネットを支えるフードバンクシステムを構築し、市民、企業、行政、福祉施設と協働して、食べ物が無駄なく消費され、誰もが食を分かち合える心豊かな社会づくりを目指している。特に子どもへの支援に力を入れており、全国のフードバンクのなかでも中心的な役割を担っている。

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