創業70年を数えるまちの紙屋さん
株式会社山利は紙の専門商社で自社の工場で断裁加工も行なっています。祖父が創業してから70年、紙の卸をメインに行ってきた、まちの紙屋さん、といったところでしょうか。紙を仕入れ、断裁し、お客様に届けるのがメインのビジネスであり、印刷物もワンストップで受注・製作・納品いたします。そのため、お客様、仕入れ先、印刷加工会社などの外注先、そして社員間のそれぞれの場面におけるコミュニケーションと信頼関係を何より大切にしています。私自身は大学卒業後、IT業界と監査法人での仕事を経て、家業を継ぎました。IT、会計、紙というのは一見無関係な業界に見えますが、どこで経験したことも今の仕事で役立っています。

奥深い紙の世界
紙製品については、お客様からデザインデータをいただきそれを具現化するのが主ですが、自社で企画販売を行う商品もあります。和紙を使った御朱印帳はその1つで、越前和紙を使用し、見た目は鮮やかで手触りは柔らかい仕上がりになっています。昨今はペーパーレス化が進んでいますが、手で触れるからこそ分かる感覚を楽しめるよう意識しています。
パンフレットや招待状の作成なども承っており、ご希望があれば一緒に紙選びから行うこともあります。弊社で扱っているだけでも数千種類もの紙があり、紙によって厚み、色、表面の風合い、手触り、インクの乗り方など特徴は千差万別です。同じ種類の紙でもパルプ繊維の並び方によって手触りや見え方が変わるし、地の色によって印刷後の印象も様々です。例えば企業のパンフレットは、人が手に取って見るものなので、ペラペラな紙かしっかりとした紙かで印象は大きく変わりますよね。私たちは商品知識を活かして、ご依頼いただいたものに付加価値を生むことができる紙をご提案しています。紙の世界は意外と奥が深いんです。
SDGsやフードロスへの関心が高まり、ストーリー性のあるリサイクルペーパーも増えています。サトウキビの削りカスであるバガスのパルプを配合したバガスペーパー、バナナの茎を擦り込んだバナナペーパー、着なくなった洋服などの布製品を回収し、コットン繊維を配合したサーキュラーコットンペーパー、デニムの廃材を再利用したデニムペーパーなど、本来は捨てられるはずだったものを再利用したおもしろい紙がたくさんあるんです。
こういったリサイクルペーパーに限らず、本当にたくさんの種類の紙があるので、弊社としても全く違う業界の方々とコラボレーションして、紙の機能や奥深さをもっと広めていきたいと思っています。世の中に紙好きの人が増えてくれたら嬉しいです。

不確実な時代に対応できる力を
コロナ禍で今まで当たり前にしてきたことが制限され、社会の価値観が大きく変化しました。世界的に見ても想像していなかったさまざまな変化が起きているので、これからの時代を生きる子どもたちは、どんなことが起きても、どんな世界になっても対応できるよう、柔軟に育っていくことが必要になるのではと思います。そのためには一つのことを追求するのも大切ですが、子どものうちにとにかくいろいろな経験をして、多様な価値観や考え方、技能を身につけた方が、対応する能力が育まれると思うんです。特に必要なのは考える力と物事の本質を見抜ける感性だと思います。
こんなに不確実な時代に前もって進むべき道を限定してしまうのは、逆に危ないと思っていて、その時その時の自分が本当に興味を持てるものを見つけて経験していく。その積み重ねがきっと将来の進路に繋がるのではないでしょうか。正解は誰にもわからないし、生活の中で自分らしく探究しながら経験していくことで、柔軟な対応力が育まれて自然と進むべき道がみえてくるのだと思います。

株式会社山利 代表取締役社長
近藤 彰宏 氏
1953年に台東区元浅草で創業した紙の専門商社。専門性を活かし、洋紙、和紙、ファンシー系特殊紙、環境対応型の紙など数千種類の紙からニーズに合わせた提案を行う。紙の販売に加え、紙製品に関するアドバイスや自社製品の企画販売など、紙に関する業務を幅広く行っている。

