捨てられるはずのものを通して見えてきた価値
この「廃材再生師」の活動しながらさまざまな経験を経て、自分の中で廃材の定義が少しずつ変わっていったことに気付きました。廃材は捨てられるはずのものではありますが、その中には誰かの思いが詰まっていることも多いのではないかと思ったんです。例えば家から出る廃材は誰が、どのような道具を使い、どのような思いでつくっているかなどの背景があると思っています。
また以前このような体験をしました。狼の「神籬(ひもろぎ)」という作品があるんですが、材料はお肉屋さんからもらった片栗粉の箱を用いました。きっとお肉屋さんが総菜をつくる際に使用していたものではないかと思います。展示会でその作品を見て「これうちの片栗粉の箱じゃない?」と言ってくれた人がいたそうです。話を聞いたらその方はお肉屋さんでなく、片栗粉を製造していた工場の方だったんですよ。私はお肉屋さんまでのストーリーしか知らなかったのですが、それよりも前のストーリーもあることを知って、感慨深く思いました。さまざまな人の思いが詰まった材料はホームセンターでは売られていない。だから私がそれらを別の作品として生まれ変わらせることで、思い入れやストーリーを引き継いでいけたらと思ったんです。一般的に廃材は価値がなくなったものというマイナスイメージを持たれがちですが、それだけではないように感じています。今では人の思いを紡いでいけることが、私が行っている活動の意味だと思っています。
皆さんの身近にも思い入れはあるけど、使われなくなったものがきっとあるのではないでしょうか。それをどうするかは皆さんに強制するつもりはありません。使われなくなったものが、新しい価値として生まれ変わる道もあることを伝えたいと思っています。

材料にかける思い
例えば象をつくる時に、表面に使う材料を象らしいものにしたり、面白い手触りのものを使用するようにしています。
あと意識していることは、材料がどんなものかわかるようにしていることです。その材料の魅力が上がるようになるべく少し加工する程度にしています。そうすることで材料を提供してくれた方が作品を見て、何かを思ってくれたら嬉しいなと思います。作品を見てくださる方にも、何が使われているか想像力を膨らませて見てもらえたら良いですね。

子どもたちに伝えたいこと
物事の価値は人それぞれだと思っています。もう価値がないと思われているものも、私にとっては無限の可能性を秘めた宝に見えるんです。 固定概念や先入観で価値を決めつけてしまうのはもったいないと思います。自分にとってはいらなくなったものでも、誰かにとっては必要なのかもしれないっていう視点を持つと、新たな価値に気づくことができるでしょう。
あと頭で考えすぎて行動しないより、とりあえずいろいろ経験してみることをおすすめします。やりたいことがあるのなら一歩踏み出して行動してみましょう!

廃材再生師 加治聖哉さん
1996年生まれ、新潟県村上市出身。公立大学法人長岡造形大学美術工芸学科卒業。
大学在学中より長岡市をはじめ、多くの地域に捨てられるはずのものがつくり出す魅力を伝え続けています。今すぐにでも動き出しそうな動物たちをつくり出し、注目を集めているアーティストのひとりです。

