実践から学ぶ新しい教育「eDIY」
スクーミーで学ぶeDIYにおいては、「地域性」と「手触り感」が重要なキーワードです。国が推進する「地方創生」「地域創生」という言葉だけを聞いても、子どもたちからするとなかなかピンときません。
スクーミーの提供するeDIY教材はコンピュータ内で完結せず、ハードウェアを作成します。光が出たり、音が鳴ったり、「自分がつくったものが自分の手元で動く」点が大きな強みです。さらに、eDIYにおけるモノづくりの先には「地域性」—その地域の課題を解決するために、モノをつくる—という明確なゴールがあります。
誰かに教わったり、聞いてからやるのではなく、「やってから学ぶ」ということ。これは、不確実な世の中で求められる「当事者感覚をもって自分でなんとかしようと動ける力」を育てるにあたり、必要不可欠な体験です。自分が必要なものを考えて、自分でつくるDIYは、その最たるもの。そこにIT技術を掛け合わせたeDIYは、最先端の学びのカタチであると言えるでしょう。
サードプレイスとしての「スクーミー」
教育の本質は、好奇心です。eDIYは子どもたちのワクワクを刺激できる新しい教育として、重要な役割を果たしています。
スクーミーでは「楽しくプログラミングで遊びつつ、実はそれが学びにつながっている」という仕組みをつくっており、教材も全て学習指導要領に準拠した内容です。そのため、学校の授業でプログラミングを習ったときに「あっ!これ、スクーミーでやったことがある!」「スクーミーでやってたことって、こういうことだったのか」と気付く、といったことが起こります。LEDライトを5分くらいで点灯させて、周囲の大人をあっと驚かせるような子もいます。
今まで学校で評価される場面というと、テストの点数とスポーツ、あるいは部活くらいしかありませんでした。しかしeDIYの登場によって、「モノづくり」という新しい舞台が生まれます。学校とも家とも違う「サードプレイスとしてのスクーミー」という考え方もできるでしょう。不登校や引きこもりの子でも、メタバース空間を使いながらオンラインで参加可能なスクーミーなら、心を外に出すことができますよね。他者から適切に評価され、自分を肯定できる体験は、子どもたちにとっては大きな自信になるし、「もっとできるようになりたい」というポジティブな向上心にもつながっていくのです。
人が成長するために必要なのは「環境づくり」
今回のダイフェスタで、僕は審査員を務めます。出会った子どもたちにスイッチを入れる、ワクワクを仕掛けていくことが好きなので、そういうチャンスをもらえるのはありがたいことです。
僕は学生時代、勉強に関心がありませんでした。なぜ学ばないといけないかがわからなかったし、それを説明できる大人も周りにいなかったのです。しかし高校生のときに出会った恩師との関わりをきっかけにして、勉強する意味を見つけました。「人は、環境によって変わる」とわかったこと……これが、現在の僕につながる大きな原体験です。まず環境を整えることで、人は育つ。関わる大人の価値観や、関わる人がどうやって触れ合うかによって、子どもたちの成長も変わってくるんですよね。
一人ひとりが社会に与えられるパワーは、とてつもなく大きいです。けれども、みんなそうは思っていません。「無理なものは無理」「自分にはなにもできない」と思って受け入れてしまっているんです。僕は、そんな現状を打破したいと考えています。人が育つための環境をつくりたい。それが今の僕のやりたいこと、ワクワクすることであり、ダイフェスタもその取り組みのうちの1つです。eDIYという新しいツールを駆使して「当たり前」の概念を変えてくれるような高校生たちの発表に、大いに期待をしています。
ヴィジョナリーパワー株式会社 代表取締役
戸田 達昭 氏
山梨大学大学院在学中に起業した山梨県初の学生起業家。卒業後にバイオベンチャー企業「シナプテック株式会社」を設立し、代表取締役に就任。最近ではスタートアップアクセラレーターとして起業家育成や事業創造に力を注ぎ、現在18社の経営に携わる。
一方で産学官民協働による地域づくりに取り組み、歴代最年少で第6期中央教育審議会生涯学習分科会委員を務め、地方国立大学の客員・特任准教授として高等教育機関における人材育成に尽力している。

